「なぜなぜ君」と「編集長」

自分の備忘録も兼ねてツラツラと書いてます。。。

田舎の怖い話「タケシとトオル」

タケシは小学校の夏休みになるといつも田舎に帰っていました。そこで彼はトオルという元気な男の子と友達になりました。トオルは日に焼けて赤いバンダナを腕に巻いていて、いつも笑顔でタケシと一緒に川で魚釣りをしたり、山で秘密基地を作ったりして楽しい思い出を作っていました。

 

しかし、小学校最後の6年の夏休みにタケシは悲しい知らせをトオルに告げなければなりませんでした。進学校の私立中学に通うことになり、夏休みも学業の補習で忙しくなるため、これからは毎年田舎に帰ることができなくなるというのです。

 

それを聞いたトオルは、笑顔のままで「俺とタケシは一生の友達だから。今年の夏はいっぱい遊んで、一生モノの思い出を作ろう」と言いました。彼はタケシとの友情を大切に思っていました。

 

ある夕方、田舎に大きな夕立が襲いかかり、川で遊んでいたタケシは川の流れに飲み込まれてしまいます。絶体絶命の状況の中、助けの手を差し伸べたのはトオルでした。トオルは勇敢に川に飛び込み、タケシに向かって 懸命の呼びかけをしました。「タケシ、バンダナをつかめーー!」タケシは必死にバンダナを掴み、トオルの助けによって命拾いしました。

 

目を覚ましたタケシは田舎の病院のベッドの上にいました。周りの人々は、あんなに川で流されてよく助かったと驚きつつも喜んでいます。しかし、タケシはトオルに助けられたと語ります。ところが、田舎の人々はトオルの存在を知りません。川で遊んでいたのはタケシだけで、助け出されたのもタケシだけだと言います。

 

タケシは困惑し、誰に話をしても信じてもらえない不思議な状況に陥ります。しかし、トオルの赤いバンダナがタケシの手に握られていることから、彼は自分の記憶が確かだと信じて疑いません。両親も心配して田舎に迎えに来ましたが、タケシはトオルへの挨拶を済ませたいと言います。しかし、両親はタケシの検査のために都会の大きな病院に連れて帰るのでした。

 


その後、タケシは次第に中学、高校、大学と進学していくうちに、トオルのことを忘れてしまいました。

 

そして、タケシが社会人になり結婚して子供が生まれると、家族で田舎に旅行することになりました。田舎には、タケシのおじいちゃんおばあちゃんは亡くなっていましたが、代わりに田舎のおじちゃんおばちゃんが住んでいました。タケシ一家はそのおじおばの家に宿泊することにしました。

 

田舎での滞在中、昔の話で盛り上がりながら楽しい時を過ごしていました。おじいちゃんやおばあちゃんたちも、かつてタケシがいつも一人で遊んでいるのを見て心配していたと言います。

 

タケシはそんな話を聞いて、自分がトオルと一緒に遊んでいたことを思い出します。しかし、田舎の人々はトオルのことを知りませんし、タケシもトオルの行方を知りませんでした。

 

そんな中、ある日の夕方、タケシの子供が遊びに行ってから帰って来なくなってしまいます。心配でたまらないタケシは田舎の人々と一緒に捜索を始めます。山の方で遊んでいたという情報は得ましたが、夜の山での捜索は危険だと判断され、翌朝に再び捜索することになりました。

 

不安で胸がいっぱいでしたが、タケシは一度おじおばの家に戻ることを決めたのです。その戻る途中、向こうから一人の男の子が泣きながら歩いてきました。それは、なんとタケシの息子でした!

 

タケシはホッとしながら息子を抱きかかえました。息子は泣きながら謝りました。「ごめんなさい、ごめんなさい。でも、トオルという男の子に助けてもらったんだよ」と息子が言いました。

 

タケシは驚きで言葉が詰まりましたが、息子の手に結ばれている赤いバンダナを見て、胸が熱くなりました。それはトオルが川で助けてくれた時に身につけていたバンダナと同じものでした。感激の涙を流しながら、タケシは息子にしっかりと抱きしめます。「君は本当にトオルに助けられたんだね。ありがとう、そしてよく帰ってきてくれた」とタケシは喜びを伝えます。

 

翌朝、タケシは昔の秘密基地に行くことに決めました。そこで一人で過ごすことで、かつてのトオルとの楽しい思い出がよみがえります。そして、タケシは心の中でトオルと対話し、昔の思い出を語りました。「トオル、いつも一緒に遊んでくれてありがとう。今もあの元気な笑顔が忘れられないよ。」

 

秘密基地にはトオルは現れませんでしたが、それでもタケシは彼の存在を確信しました。トオルはいつも彼の傍にいたのだと、確信する瞬間でした。

 

そして、息子の手に結ばれていた赤いバンダナを秘密基地に返すと、タケシは静かに頭を下げ、心からの感謝を伝えました。そして、タケシはトオルとの友情を永遠に忘れることのないことを誓いました。

 

それからというもの、タケシ家族は毎年夏に田舎に帰ることに決めました。そして、川や山でトオルと過ごした日々を思い出しながら、新たな思い出を作っていくのでした。。。

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